10年ぶりの絵本、AIと描いた3ヶ月
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子育てで遠ざかった、絵と物語の世界
沢井さん(38歳)は、2人の小学生を育てる母親だ。平日は事務パートとして働き、週末は子どもたちのサッカーと習い事の送迎に追われる。ごく普通の、忙しい日常。
けれど10年前、彼女には別の顔があった。グラフィックデザイナーとして働きながら、絵本作家を目指していた。週末ごとにスケッチブックを広げ、動物たちが冒険する物語を描いていた。出版社に持ち込んだこともある。「いつか必ず」と信じていた。
転機は第一子の妊娠だった。体調を崩し、仕事を辞めた。出産後は夜泣きと授乳に追われ、スケッチブックを開く気力も時間も消えた。「また落ち着いたら」と自分に言い聞かせたが、次第にその言葉も口にしなくなった。絵の具が固まったパレット、未完のラフ画――すべてクローゼットの奥に押し込んだ。
2026年1月、SNSのタイムラインに1本の投稿が流れてきた。「AI使って絵本つくってみた」というタイトルと、柔らかいタッチの動物のイラスト。心臓が跳ねた。「これ、私がやりたかったやつだ」
その夜、子どもたちが寝静まった後、沢井さんはスマホで「AI 絵本 作り方」と検索した。出てきた記事には、対話型AIでストーリーを整理し、画像生成AIでイラストを作る手順が書かれていた。特別なソフトも技術もいらない。必要なのは「やりたい気持ち」だけ。
翌朝、5時に起きた。いつもより1時間早い。リビングのテーブルにノートPCを開き、対話型AIに話しかけた。
「森に住む小さなリスが、初めて海を見に行く話を書きたい」
AIは丁寧に質問を返してくれた。リスの名前は? どんな性格? 何がきっかけで海を目指すの? まるで編集者と打ち合わせしているような、温かい対話。30分で、物語の骨格ができあがった。
次は絵だ。画像生成ツールに、AIが提案してくれた情景を入力する。「森の中、大きな木の根元に座る小さな茶色のリス、優しい朝の光」――数十秒後、画面にイラストが現れた。
息を呑んだ。それは、10年前に頭の中で思い描いていた景色そのものだった。
それから3ヶ月、沢井さんは毎週末の朝5時から8時までを「絵本の時間」にした。子どもたちが起きる前の、誰にも邪魔されない3時間。
最初の4週間は、ストーリーの推敲に費やした。AIとの対話を通じて、物語は何度も書き直された。リスが海で出会う友達、帰り道で学ぶこと、ラストシーンの描き方――AIは答えを教えるのではなく、質問を投げかけてくれた。「このシーンで、リスは何を感じているの?」
5週目から、本格的に絵を作り始めた。各ページのラフ案を画像生成AIで作り、気に入らない部分は指示を変えて何度も生成し直す。「もっと温かい色調で」「リスの表情をもっと驚いた感じに」――合計で240枚以上のバリエーションを生成した。
8週目、沢井さんは初めて夫に進捗を見せた。「すごいじゃん、本物の絵本みたい」という言葉に、涙が出そうになった。
12週目、全24ページが完成した。表紙、裏表紙、見返しまで含めて、すべて形になった。10年前には「いつか」だったものが、90日で「ここにある」に変わった。
ある土曜の夜、沢井さんは小学2年生の娘に絵本を見せた。
「ママが作ったの?」
「うん、AIと一緒に」
娘はページをめくりながら、何度も同じ場面を見返した。ラストシーンで、リスが家に帰ってきて家族に海の話をする場面――娘は顔を上げて言った。
「ママ、すごい。ちゃんと絵本になってる」
その言葉が、何よりの報酬だった。
沢井さんは地域の図書館に連絡を取り、寄贈を申し出た。図書館は快く受け入れてくれた。1ヶ月後、図書館から連絡があった。「子どもたちに人気で、貸出が続いています」
予想外の反響に、沢井さんは2冊目の構想を始めている。今度は、海で出会ったカニの物語。週末の3時間は、今も続いている。
沢井さんのような事例は、2026年に入って急速に増えている。HAIIA の3つの軸が掲げる「自己実現」の形として、AIを活用したクリエイティブな挑戦が注目されている。
沢井さんが実際に踏んだプロセスは、以下の通りだ。
対話型AIに物語のテーマを伝え、キャラクター設定・あらすじ・各シーンの展開を整理する。この段階では「完璧」を目指さず、まず全体の流れを作ることを優先した。
画像生成AIで各ページのイラストを作成。重要なのは一貫性。キャラクターの見た目、色調、画風を揃えるため、最初に「スタイルガイド」となる1枚を作り、それを基準にすべてのページを生成した。
文章と絵のバランスを見ながら、細部を調整。文字の配置、ページ送りのリズム、読み聞かせたときの響き――すべてを声に出して確認した。
この3ステップは、絵が描けない人でも、文章が苦手な人でも、AIと対話しながら進められる。必要なのは「形にしたい」という気持ちだけだ。
AI活用のスキルを体系的に学びたい方には、HAIIA の認定資格も選択肢の一つとして検討できる。
はい、作れます。沢井さん自身、デジタルイラストの経験はほとんどありませんでした。画像生成AIは「こんな絵が欲しい」という言葉を受け取り、それを形にしてくれます。重要なのは、イメージを言葉で伝える力です。最初はうまく伝わらなくても、何度も試すうちに精度が上がっていきます。
利用するAIツールの利用規約によります。多くの画像生成AIは、商用利用を許可していますが、事前に確認が必要です。沢井さんの場合、まずは図書館への寄贈という形で「人に読んでもらう」体験を優先しました。販売はその次のステップです。
沢井さんのケースでは、週末3時間 × 12週間 = 約36時間で完成しました。ただし、これはあくまで一例。物語の長さ、こだわりの度合い、使えるツールによって変わります。「まず1ページだけ作ってみる」という小さなスタートでも、十分に意味があります。
沢井さんが最後に語ってくれた言葉がある。
「10年前、私は『絵が描ける技術』がなくて諦めた。でも本当に必要だったのは、技術じゃなくて『形にする勇気』だったんだと思う。AIは技術を補ってくれた。残りは、自分が一歩踏み出すかどうかだけ」
諦めた夢は、消えたわけじゃない。ただ、遠くに置いてきただけだ。
今週末、3時間だけ早起きしてみる。スマホを開いて、AIに話しかけてみる。「こんなことがやりたかった」と。それだけで、何かが動き始める。
沢井さんのように、同じ想いを持つ人たちと繋がりたい方は、仲間募集のページもチェックしてみてください。一人じゃないと気づけるはずです。
絵本でも、音楽でも、小説でも、ポッドキャストでも――形は何でもいい。大切なのは「もう一度、動かしてみる」こと。
AIは、そのための最高の相棒になってくれる。
この記事は HAIIA Notes からの転載です。