保育士が AI と 3 ヶ月で絵本を作った話 ― 諦めた夢を動かす対話と実践
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2026年1月のある夜、沢井さん(34歳)はスマートフォンの画面を見つめたまま、15分ほど動けなかった。同僚がSNSに投稿した「生成AIで作った絵本の表紙」が、10年前に諦めた夢を揺さぶった。
保育士として8年目。絵本の読み聞かせは毎日の仕事だ。子どもたちに届く言葉の選び方、ページをめくるタイミング、物語が心に残る構造――プロの絵本作家の技術を、沢井さんは誰よりも理解していた。けれど「自分には描けない」という壁が、ずっとそこにあった。
美術大学に進む選択肢もあった。高校 2 年の冬、担任に相談したとき「絵の才能だけで食べていくのは厳しい」と言われ、教育学部を選んだ。保育士になってからも、休日に絵本のアイデアをノートに書き溜めては、「でも形にできない」と閉じる繰り返しだった。
2026年1月中旬、状況が変わった。同僚の投稿をきっかけに、画像生成 AI と 対話型 AI を使えば、絵を描くスキルがなくても物語を形にできることを知った。翌日、仕事が終わってから生成AIサービスに登録し、最初のプロンプトを打ち込んだ。
「森の中で迷子になったリスの子ども、優しい表情、絵本風」
20秒後、画面に現れたのは確かにリスだったが、沢井さんが頭の中で描いていた「あの子」ではなかった。耳の形、目の大きさ、背景の色合い――すべてが微妙にズレている。2枚目、3枚目と生成を繰り返したが、同じリスが出てこない。キャラクターの一貫性がないと、絵本として成立しない。
その夜は午前1時まで試行錯誤を続け、結局まともな1枚も残せなかった。
翌週、沢井さんは方針を変えた。いきなり完璧な絵を求めるのではなく、まず物語の骨格を固めることにした。対話型AIに「4歳児向けの絵本のプロットを一緒に作りたい」と相談し、テーマ・登場人物・ページ構成を1週間かけて練り上げた。
物語のタイトルは『ちいさなリスのおくりもの』。主人公は森に住むリスの「ノン」。冬が来る前に、大切などんぐりを友達に分けてあげる話だ。全32ページ、見開き16場面という構成が決まった。
次に取り組んだのが、キャラクターデザインの固定だ。沢井さんは対話型AIに「リスのノンの外見的特徴を箇条書きで記述してほしい」と依頼し、それをもとに画像生成AIのプロンプトを組み立てた。
このリストを毎回プロンプトに含めることで、ノンの姿が安定し始めた。1月の終わりには、20枚以上のノンのイラストが手元にあった。
2月は背景とシーンの生成に集中した。森の朝、昼、夕暮れ。雪が降り始める場面。どんぐりを友達に渡すシーン。1場面につき平均 15〜20回の生成 を繰り返し、最も物語に合う1枚を選んだ。仕事が終わってから毎晩30分、週末は2〜3時間をこの作業に充てた。
対話型AIは物語の整合性チェックにも役立った。「このセリフは4歳児に伝わるか」「この展開は唐突ではないか」と相談すると、具体的な改善案が返ってきた。沢井さんは AI を「共同編集者」のように扱い、最終的な判断は自分で下した。
3月20日、絵本の全ページが揃った。画像生成AIで作った32枚のイラストに、自分で書いた文章を重ねる。レイアウトは無料の編集ツールで調整し、PDF形式で1冊のデータが完成した。
翌週、沢井さんは園長に許可を得て、勤務先の保育園で試し読み会を開いた。4歳児クラス18人の前で『ちいさなリスのおくりもの』を読み聞かせた。
「ノンちゃん、やさしいね」「どんぐり、あげるの?」
子どもたちの反応は上々だった。最後のページを閉じたとき、「もう1回!」という声が3人から上がった。この瞬間、沢井さんは自費出版を決めた。
4月初旬、オンデマンド印刷サービスを使い、20部を印刷した。費用は1部あたり約800円、合計 16,000円。製本されたA4サイズの絵本が自宅に届いた日、沢井さんは「形になった」という実感を初めて持った。
制作期間は約3ヶ月。使った主なツールは、画像生成AI、対話型AI、無料の編集ソフトの3つ。技術的なハードルは、10年前と比べて劇的に下がっている。けれど沢井さんは「AIが全部やってくれるわけではない」と強調する。
「プロンプトを調整する時間、物語を練る時間、何度も生成し直す忍耐。AI は道具で、使う人の意図がないと動かない。自分が何を作りたいのか、誰に届けたいのかが明確でないと、結局うまくいかない」
実際、最初の1ヶ月は期待と現実のギャップに何度も挫折しかけた。けれど「諦めた夢をもう一度動かしたい」という気持ちが、毎晩30分の作業を続けさせた。
沢井さんは現在、2作目の構想を練っている。テーマは「友達との別れ」。転園していく子どもたちに向けて、背中を押せる物語を作りたいと考えている。
今回の経験を通じて、沢井さんは「作る技術」よりも「伝えたいこと」の方が重要だと気づいた。AIは絵を生成してくれるが、物語の核心は人間が決める。4歳児に何を届けたいのか、どんな感情を残したいのか。その問いに向き合い続けることが、創作の本質だと感じている。
AI活用のスキルをさらに深めたい人には、HAIIA の認定資格のような体系的な学びの場も選択肢になる。技術だけでなく、自己実現としてのAI活用を軸に据えた視点は、「諦めた夢を動かす」という HAIIA のブランド方針とも重なる。
そして、同じように「やりたいことがあるけど、できない理由がある」と感じている人がいるなら――描けなくても、書けなくても、技術がなくても、作りたいものがあるなら、まず1回だけ試してみる。その1回が、10年止まっていた何かを動かすかもしれない。
沢井さんの次の1冊は、2026年の夏に完成予定だ。HAIIA の仲間募集のように、同じ志を持つ人たちと学び合う場も、これからの選択肢として広がっている。
沢井さんのケースでは、画像生成AIと対話型AIの有料プランで月額約3,000円、印刷費が1部800円×20部で16,000円、合計約 25,000円 でした。無料プランを活用すれば、印刷費のみで始めることも可能です。
はい。画像生成AIを使えば、絵を描くスキルがなくてもイラストを作成できます。重要なのは「どんな絵が欲しいか」を具体的に言語化する力と、何度も試行錯誤する時間です。
沢井さんは約3ヶ月かかりましたが、毎日30分〜週末2〜3時間のペースです。集中して取り組めば1〜2ヶ月、逆にゆっくり進めれば半年以上かかることもあります。大事なのは「完成させる」と決めて続けることです。
この記事は HAIIA Notes からの転載です。